メディカルエッセー 『航跡』・43
ボカシ言葉と国際学会
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1024-1025
発行日 2000年8月20日
Published Date 2000/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904181
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風薫る五月は学会のシーズンである.アメリカ各地の学会に出席した往き帰りに,アイオワに立ち寄る日本からのビジターの数は,この月が四季を通じて一番多い.ひと月の間にニッポンからのビジターを迎えて開いたパーティの数は十指に余る.お客さまにはまずアイオワ大学病院を見学し,つづいて大学の誇る18ホールのチャンピオンシップコースでゴルフのあと,わが家のバックヤードでレセプション,続いてステーキディナーというのがお決まりのコースである.厚さ4cm,500gのTボーンステーキは,ニッポンのレストランのメニューにはない.ずしりと重い骨つきのビーフを,灼熱したグリルに乗せ,さっと1,2分両面を焦がしたのをポン酢で食べるのがわが家のしきたりである.
ニッポンのものはなんでも世界一と信じている人たちだから,旨いの美味だのといわれても,口にするまでは半信半疑.どうせアメリカのことだから,靴の裏のように固くていい加減な肉だろうという表情が見てとれる.ところが一口味わうと,この世にこんな旨いものがあったのかという複雑な笑顔に変わる.これをみてるのが面白くて,ステーキを焼くのをやめられない.実際,アメリカという国は懐が深くて,ステーキひとつにしても駆け足で表面を見ただけでは真髄には触れられない.こうべビーフのほかにも世界各地でステーキを味わったが,ビーフはアイオワが断然一番である.
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