グラフ
言葉の海を越えて—『失語症友の会』国際交流の旅
ムトー 清次
,
和田 務
,
本誌編集室
pp.780-783
発行日 1996年9月1日
Published Date 1996/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905159
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
5月31日,総勢100人以上の大旅行団が成田空港をヨーロッパに向けて飛び立った.「失語症友の会国際交流の旅」の一行だった.参加者は脳血管障害や交通事故などによって失語症になった人41人(うち車いす使用者20人,最高齢者79歳),家族42人,ボランティア22人だった.
この旅行の企画者は,東京都多摩老人医療センターの言語療法士(ST)の遠藤尚志(たかし)さんである.遠藤さんは1980年頃から,家に閉じこもりがちの失語症の人たちを,家から外に連れ出し,地域に「失語症友の会」をつくる活動をはじめた.「失語症患者と家族のつどい」の設立にかかわり,ネットワークの輪を広げている.自らを「ことばの旅芸人」と呼び,重度失語症者のための集団リハビリ「失語症ライブ」を全国各地で行なっている.遠藤さんにとって,失語症リハビリは狭義の言語訓練をはるかに超えて,仲間をつくり,良く生きること(well-being)を追求することなのだ.海外旅行を企てたのは,「旅こそ最高のリハビリである」と信じる遠藤さんの“哲学”の壮大な実践なのである.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.