メディカルエッセー 『航跡』・37
病院の安全危機管理(1)—医療施設認定合同委員会
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1458-1459
発行日 1999年11月20日
Published Date 1999/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903957
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昨今,日本の医療界は横浜市大の手術患者取り違え事件をはじめ,異型輸血,誤薬静注,消毒薬静注事件など一連のきわめて重篤な医療事故により,社会から疑惑の視線を浴びている.日本の病院で日常実施されている医療サービスは,果して先進文明国市民の期待に応えられるほど安全なのだろうか?事故が表面化するたび,施設の責任者がメディアにむかって深々と頭を垂れて陳謝し,再びこうした事故を起こさぬよう厳重に注意すると空しく誓う.日本のメディアは相手が下手に出てひたすら恭順の姿勢さえ示せば,追求の手をゆるめてしまう習性がある.期日を限定した具体的な対策の実施を見るまでもなく,詫びたのだから許してしまうという精神主義のイタチごっこに終わる.これではいつまでたっても医療事故はなくならない.医療を受ける市民の間には半ばアキラメの気持ちが生じているのではないか.他の先進文明国には医療サービス水準を規定し,質が維持されているか随時チェックするシステムが存在する.このシステムは特定の施設にのみ適用するのではなく,全国的な規模で作動し,国民が適正な医療サービスを受ける権利を擁護するためにある.患者取り違え事件が仮にアイオワ大学病院で発生した場合,即日病院監査が実施され,原因追求と具体的な発生防止策が出されるまで医療業務は停止となるだろう.
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