特集 薬物療法マニュアル
Ⅵ.感染症の薬物療法
3.臓器・系統別感染症
腹腔内感染,腹膜炎
木暮 道彦
1
,
後藤 満一
1
Michihiko KOGURE
1
1福島県立医科大学第1外科
pp.379-381
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903890
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基本的な事項
急性腹膜炎は大部分が続発性腹膜炎1)であり,その原因疾患はさまざまであるが,消化管穿孔によるものが多く,穿孔臓器によって常在菌が異なるためその起因菌に応じた抗菌療法が必要である(表1).外科的あるいは抗菌療法によっても治癒しきれない場合は腹腔内膿瘍に移行する.ここで分離される菌は起因菌が異なり,混合感染が多く2),単独感染よりも細菌の病原性が増強する3).さらにグラム陰性菌からエンドトキシンが流出すること,黄色ブドウ球菌や化膿性連鎖球菌の存在下ではスーパー抗原が産生されるため,生体のエンドトキシン感受性が高まる4)ことから混合感染時には重症化に注意する必要がある(図).
腹膜炎では炎症性サイトカインによって好中球が腹腔内局所の生体防御を行うが,炎症性サイトカインが大量に産生されると重要臓器に集積した好中球が臓器障害を引き起こす.腹膜炎でSIRS(systemic inflammatory response syndrome)の条件を満たせば敗血症であり,予後不良である5).また腸管麻痺による腸管内圧亢進と蛋白異化亢進による腸管粘膜の萎縮がbacterial translocationをもたらし,敗血症を助長する(図).
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