特集 薬物療法マニュアル
Ⅳ.術後愁訴と合併症の薬物療法
8.腎・泌尿器系
排尿困難
大東 貴志
1
Takashi OHIGASHI
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科
pp.311-312
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903868
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基本的な事項
排尿困難,特に尿閉は比較的多く認められる術後の合併症である.発生率は3.8〜52%とされ,肛門直腸疾患,婦人科疾患に対する手術やヘルニア根治術の術後に多い1).尿閉あるいは排尿困難は患者に苦痛を与えるばかりでなく,難治性尿路感染症の原因となり,腎後性腎不全を引き起こすこともある.またカテーテル留置自体が感染や膀胱尿道損傷の原因となることがある.
排尿困難の成因,および薬物治療を考える場合,排尿のメカニズムを理解する必要がある.下部尿路機能は交感,副交感,体性神経による三重支配を受けている.仙髄(S3〜S4)から分岐する副交感神経系の骨盤神経は骨盤神経叢を経て主に排尿筋に作用し,これを収縮させる.一方,交感神経系の節前線維はTh11〜L2から始まり,主要経路は大動脈前面の上下腹神経叢で節後線維となり,下腹神経を構成後,α1受容体を介して膀胱底部や尿道平滑筋の収縮をもたらし,またβ2受容体を介して排尿筋を弛緩させる.体性神経の遠心路はS3〜S4前角から出て陰部神経となり,外尿道括約筋と骨盤底筋群に分布する.
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