メディカルエッセー 『航跡』・19
何拠へ行くのか一般外科研修制度
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.340-341
発行日 1998年3月20日
Published Date 1998/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903132
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アイオワ大学の外科は,一般外科,心臓胸部外科および脳外科の3部門に分かれている.Sur-geon-in-chiefがその上に立って総指揮を執る.
一般外科は,消化器,血管,移植,形成,小児,熱傷,腫瘍,内分泌,それに外傷外科のセクションに分科分業しており,各セクションはそれぞれのディレクターが責任をもって運営する.運営という言葉には科の経営,すなわち財政の収支バランスをとる仕事も含まれていて,外から見るほどたやすくはない.外科各科の収入源の90%は手術料である.手術料は1セントたりとも私することはなく,すべて科の収入とされる.この収入から学長,医学部長,外科および一般外科にそれぞれの定めた比率に応じて“税金”を取られる.さらに病院からは個々のスタッフのオフィスの1平方フィートあたりいくらと定めた家賃を取られる.このほかに光熱費やコンピュータの使用料もある.患者さまを診るたびに,時間あたり何十ドルもの外来使用料を病院に召し上げられる.アメリカの手術代がいくら高いといっても,稼いだカネのあらかた半分はこうした経費で消えてしまい,残りをスタッフや秘書の給料,旅費その他大学人としての活動費に充てると,何年経っても財政は黒字にはならない.ニッポンと違って州立の大学といえども星条旗は親方になってくれないから,分科の責任者はあの手この手で経費の節約と,収入を増やす努力を強いられる.
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