特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅱ.特殊な病態の術前患者管理
5.内分泌・代謝系
糖尿病
土井 隆一郎
1
,
井上 一知
1
,
今村 正之
1
1京都大学医学部第1外科
pp.360-362
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902517
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術前検査と重症度の判定
外科医は,まず外科手術対象症例における糖尿病の割合がきわめて高いことを認識すべきである.手術対象症例の高齢化,および日本人の食生活における過食傾向および偏食傾向によって近年この割合は確実に増加している.外科患者における糖尿病の扱いの第一歩は,病歴によって聴取しうる糖尿病の既往症のみならず,潜在的に存在し外科手術によって顕在化しうる自覚症状のないレベルの糖尿病までをも確実に把握することである.このために必要な検査を術前に施行し(表1),糖尿病の重症度を判定する(表2).糖尿病状態においては,内因性のインスリンの絶対的,相対的不足による糖代謝の異常のみならず,糖代謝異常によってもたらされる低栄養,脂質,蛋白質代謝の異常,電解質異常,脱水が存在する.さらには長期間にわたる糖尿病の合併症として,全身性の血管硬化,重要臓器の機能低下,感染に対する抵抗の減弱などがある.以上のことを念頭に置いて術前検査により病態を十分に把握しておく.
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