特集 施設別/新・悪性腫瘍治療のプロトコール
Ⅳ.肝癌治療のプロトコール
(1)旭川医科大学第2外科
葛西 眞一
1
,
紀野 修一
1
,
水戸 迪郎
1
Shinichi KASAI
1
1旭川医科大学第2外科
pp.121-127
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901679
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現在,肝癌に対しては,手術,肝動脈塞栓術(TAE),経皮経肝的エタノール注入療法(PEIT),動注療法,マイクロ波凝固壊死療法など各種の治療手段を選択しうる.これら治療手段のうち,手術は,癌病巣を取り除くことが可能な唯一の治療法である.1977年に当科が開設されて以来15年間の肝癌治療成績を示す(図1).この期間に当科で治療した231例の肝癌症例中,消息不明38例を除く194例を対象とし,治療経過中に選択された治療手段別の累積生存率を示している.治療経過中に肝切除術が施行された症例は74例,TAEは75例,動注は85例,肝動脈結紮術は26例であった(総数が194例にならないのは,治療経過中に複数の治療手段を施行された症例があるため).肝予備力や癌の進展程度などの背景因子を考慮していないので,この成績から治療手段の優劣はつけがたいが,少なくとも肝切除を選択できた症例の予後は良好であるといえる.このように,当科では肝癌患者を前にしたとき,まず肝切除の可能性を考える.
しかしながら,わが国の肝癌患者は,その約8割に慢性肝炎,肝硬変などを合併しており,全例において,術後の肝不全や術後QOLの低下などを引き起こすことなしに,根治的に癌を切除しうるとは限らない.そのため,肝癌の手術においては,術後の肝障害が最小限になるように,術前の肝機能(肝予備力)を的確に評価する必要がある.
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