特集 Dos & Don'ts外来の小外科
Ⅰ.頭部・顔面・口腔
28.顎関節脱臼
鳥山 稔
1
1国立病院医療センター耳鼻咽喉科
pp.72-73
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901306
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顎関節は側頭骨の下顎窩で,前方は関節結節,後方は鼓室鱗裂に接するが,外側は頬骨弓上のあいだにある側方靱帯を通して皮下に,内側は外側翼口蓋筋に接し,図1に示すように後方も外側靱帯で補強し,斜位をとって下顎骨頭を下顎窩に保持させて脱臼を防御している.関節嚢のなかには上関節腔と下関節腔があり,その間に関節円板という線維性被覆層があって,これが骨膜として下顎骨頭の前後への滑走と同時に回転運動を行うことを容易にしている.また,側方運動を混合して行える.
あくび,哄笑,叫喚,歯科・口腔治療などの際に過度に開口させたとき,この骨頭が前方に滑走して関節結節を越えたとき,頬骨下顎筋,咬筋などの緊張のために前上方に移動し,閉口が不能になる.これは両側に同時に起こることも,片側に起こることもある.ただし,近年の研究では,X線学的に閉・開口時の下顎頭運動をみると,最大開口時にはほとんどの症例で関節結節を越えて,下前方へ滑走運動をしているという説もある1).
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