特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅳ.術後愁訴・合併症に対する薬物療法
8.術後肺炎
佐藤 光晴
1
,
島田 康弘
1
1名古屋大学医学部麻酔科
pp.134-135
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900969
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次々と登場する新たなる抗菌剤によっても,術後肺炎は未だ克服されず,患者の予後を規定する因子としてその臨床上の意義は大きい.1つには,手術適応の拡大や患者の高齢化など宿主側の要因もあるが,他方,抗生物質投与のみに頼ったこれまでの治療にも問題のあることは既に様々な形で報告されている.
術後肺炎の成因に関しては多くの病因が推定されているが,はっきりしたことは未だ不明の点が多く,この問題の根本的な改善の妨げとなっている.しかし術後肺炎は,①胸部もしくは上腹部の手術後に最も多く,また②慢性肺疾患の存在は術後肺合併症の頻度を3倍に増加させる.さらに③肥満(120kg以上),加齢(70歳以上),そして喫煙歴は術後肺炎の重要な誘因となる1)などの事実を踏まえ,総合的に対処することが重要であり,本稿のテーマである薬物療法に限っても,抗生物質のみによる治療ではこの問題は解決しない.
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