Japanese
English
臨床報告
胸部中部(Im)食道に発生した原発性腺様嚢胞癌の1例
A case report of the esophageal adenoid cystic carcinoma
木之下 藤郎
1
,
吉中 平次
1
,
今村 博
1
,
森永 敏行
1
,
草野 力
1
,
馬場 政道
1
,
福元 俊孝
1
,
島津 久明
1
Fujirou KINOSHITA
1
1鹿児島大学医学部第1外科
pp.1919-1923
発行日 1990年12月20日
Published Date 1990/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900339
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はじめに
腺様嚢胞癌(Adenoid cystic caacinoma)は唾液腺,上気道,乳腺などにみられるが,食道発生はきわめて稀で,内外の文献をあわせても54例の報告をみるにすぎない.また,食道の腺様嚢胞癌は唾液腺のそれに比べ,組織学的にも臨床的にもはるかに悪性度が高いとされ,このことにも関連して,従来もっとも支持を得ていた食道固有粘液腺やその導管上皮から発生するという考えに対し,最近では,被覆扁平上皮由来説や上皮基底層あるいは類似の未分化な細胞由来とする説もみられ,いまだに発生母地に関する定説がない。報告例の多くはStage Ⅲ,Ⅳの進行した段階で治療され,広範な血行性,リンパ行性転移で死亡している.
今回,深達度が粘膜下層にとどまる,比較的早期の本症1例を経験した.典型的な篩状構造(cribriformpattern)と同時に,充実性癌胞巣部分,主に上皮内にとどまる扁平上皮癌あるいは基底細胞癌類似の部分も認められ,多彩な組織像を示した.患者は術後1年6ヵ月を経過した現在,再発の徴候もなく健在である.発生母地や予後に関する文献的な考察を加えて報告する.なお,所見の記載は食道癌取扱い規約1)に従った.
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