手術器具・手術材料—私のこだわり・3
肝圧排器具 ヘパリフトX®
藤原 道隆
1
,
小寺 泰弘
2
Michitaka FUJIWARA
1
1名古屋大学大学院医学系研究科メディカルxRセンター
2名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学
pp.335-337
発行日 2022年3月20日
Published Date 2022/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213658
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開発の背景
腹腔鏡下胃切除や逆流防止手術において,術野展開のため肝左葉を圧排する種々の方法が行われている.最も一般的に使用されている鋼製のNathanson鉤は,以前よく行われていたペンローズを使用する方法に比べ挿入手技が簡便だが,ソフトな圧排法に比べて術後の肝酵素上昇が大きく,5 mm径トロッカーと同程度の挿入創が余分に必要である.また,近年比較的多く使用されるシリコンディスク板は,Nathanson鉤と併用すると「クッション」として有用であるが,糸で固定した場合,肝臓の形態に合った配置でなく術野にはみ出し気味であるなど,必要十分な圧排となっていない場合がある.ペンローズ法は,過不足なくソフトな圧排を行いやすいが,いわば肝臓を「つり上げる」方法なので,Nathanson鉤同様,局所的な肝の虚血所見を見ることがあり,手技においては,肝冠状間膜を切開し肝背面のbare areaを剝離してペンローズを肝背面に通す作業に少々慣れを要し,肥満症例では困難なことがある.さらに,ペンローズを加工し,体腔内に入れて臓器圧排目的に使用するのは,最近問題になることが多い「適応外使用」にあたる.
このため,ペンローズ法の発展型で,様々な体格の患者に加工を加えることなく,留置手技が比較的簡単で,肝に愛護的でかつ圧排の強さ調節も容易な器具として,ヘパリフトX®(オオサキメディカル)を開発した.
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