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はじめに
免疫チェックポイント阻害療法の登場は,がん治療に新たな選択肢の幅を広げた.免疫療法の作用点は多岐にわたるが,抗PD-1/PD-L1抗体は免疫チェックポイント分子の機能を中和することで抗腫瘍効果を得ることを狙った治療法である.PD-1は1992年にクローニングされた後に多くの機能解析が進められ1,2),活性化T細胞に発現してその過剰な活性を抑制する調節因子として機能することが知られている.PD-1のリガンドはPD-L1とPD-L2であり,腫瘍細胞や腫瘍微小環境のストローマ細胞はこれらのリガンドを発現することでがん免疫から逃避する.このメカニズムを標的として開発された抗PD-1抗体のニボルマブは,本邦においてメラノーマの治療薬として2014年に世界初の承認を受けた.進行性メラノーマ患者107例を対象にした臨床試験では,奏効率31.8%,5年生存率34.2%という優れた治療効果を示し3),以後ニボルマブ単剤療法としては非小細胞肺がん,腎細胞がん,ホジキンリンパ腫,頭頸部がん,胃がん,悪性胸膜中皮腫,食道がん,MSI-High結腸・直腸がんに適応が拡大している.また,同じ抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは,2016年のメラノーマに対する承認を皮切りに,非小細胞肺がん,ホジキンリンパ腫,尿路上皮がん,MSI-Highを有する固形がん,頭頸部がんに適応となっている.
免疫チェックポイント阻害療法は,従来の標準治療法とは異なる機序を介して作用することで多くの臨床試験において有効性を示してきたが,単剤治療での奏効率は10〜30%程度であり3),依然として反応が乏しい患者が多く存在することも事実である.このような課題の克服のため,現在では他の治療法や別の免疫療法との組み合わせによる複合免疫療法が模索され,多くの臨床試験が実施されている.より高い抗腫瘍効果を得るためには,組み合わせる治療法の特徴を熟知し,最大限に活かすことが複合免疫療法の重要なカギとなる.そこで本稿では,抗PD-1抗体療法をベースとした最新の複合がん免疫療法について論述する.
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