特集 変貌する肝移植—適応拡大・ドナー選択・治療戦略の最先端を知る
扉
pp.1017
発行日 2020年9月20日
Published Date 2020/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213038
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1989年に本邦初の生体肝移植が行われてから30年が経過した.1999年には臓器移植法に基づく本邦初の脳死肝移植が行われ,生体・脳死ともに肝移植は日常医療として定着し,技術的にも成熟期に達している.しかし,脳死ドナー不足の問題は依然として残っており,最近では少ない脳死ドナー肝を適正に配分すべく,待機リストへのMELDの導入などのシステム改革や,より多くの脳死肝移植を実現するために分割肝移植や拡大基準ドナー(マージナルドナー)の利用などの工夫が行われている.一方,かつて成人肝移植の主たる適応疾患であったC型末期肝硬変は新規DAA(direct acting antivirals)の出現により減少するとともに,肝移植後の成績も著明に改善された.また,5-5-500基準による肝細胞癌に対する肝移植適応拡大が2019年8月から脳死肝移植に対して保険収載され,肝移植適応疾患の分布も変化しつつある.さらに,腹腔鏡下生体ドナー肝切除,抗体関連拒絶反応に対する検査・治療,かつて禁忌とされた転移性肝癌や肝門部胆管癌に対する肝移植などは,肝移植医療における新展開として注目すべき事項である.
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