増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル
Ⅲ章 術式別の術前・術中・術後管理
膵
膵全摘術
亀井 敬子
1
,
松本 逸平
1
,
竹山 宜典
1
Keiko KAMEI
1
1近畿大学医学部外科学教室
pp.193-196
発行日 2019年10月22日
Published Date 2019/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212694
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膵全摘術は,膵内外分泌機能の完全脱落をきたすため,栄養管理や血糖コントロールに難渋し,QOLを著しく損なう術式であるとされてきた.しかし近年,外科手術手技の向上と,高力価膵消化酵素剤の開発や強化インスリン療法の導入などにより,一定のQOL保持が可能となり,その適応症例は増加している.さらに膵切除後の残膵再発などによる残膵全摘術も増加している.
その施行に際しては,術前に十分なインフォームド・コンセントを行い,術後の病態を患者本人に十分に理解してもらうことが重要である.また,治療早期から,外科医と糖尿病内科医が密接に連携するとともに,患者への教育,栄養士や患者家族の適切なサポートなども極めて重要である.膵全摘術後はインスリン自己注射が必須であるため,自己注射が行えない者,理解できない者,独居の患者などには,膵全摘術の適応を慎重に判断する必要がある.また,膵癌における膵全摘術はいまだ予後不良であるとの報告も多いため,術前療法などの集学的治療も考慮し,安易に膵全摘術を選択すべきではない.本稿では,膵全摘術後の栄養代謝管理の要点を中心に述べる.
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