1200字通信・125
46年のタイムスリップ
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.1473
発行日 2018年12月20日
Published Date 2018/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212304
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- 文献概要
年の暮れに,大掃除のつもりで自宅の机を整理した時のことでした.引出の中のガラクタを出していると,奥の方から予備校時代の定期入れが出てきました.通学に使っていた電車の定期券と予備校の学生証が入っており,手帳の身分証明のページには自分の写真(当たり前か)が貼ってあり,19歳の自分と再会することになりました.定期券をみると46年前の年号が記載されており,いきなりタイムスリップしたような奇妙な感覚を味わうことになりました.早速,妻と娘に見せましたが,「ふぅ〜ん」といった程度の反応で,ちょっとがっかりしましたが,独り秘かに興奮したことではありました.
改めて考えてみると,実家は倉敷で,予備校は大阪の豊中にあり,下宿は電車で二駅の所にありました.で,年末には受験の準備のために下宿を引き払って実家に戻り,幸いにも一浪で大学へ入ることができ,大学は大阪の高槻で6年間,卒業後は数か月実家で過ごしてから三重の松阪へ.2年の後,再び実家にもどって2年間地元の病院へ.その後3年間の岡山大学での研究生活を経て,今の病院へ赴任.こちらに来てからも,一度引っ越しして今の家で26年.この間,実家を離れるたびに同じ勉強机を持って行き,戻る時にも持って帰っていたので,その机の中にその定期入れがずっとあったということになります.いかに私が貧乏性で物持ちが良いとはいえ,今の家に引っ越す時に,その机は処分しており,それでもなお小さな定期入れが失われずに身近にあったとは,大袈裟ではなしに「奇跡」といっても良いのではないでしょうか.
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