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はじめに
飽食の時代を迎えたわが国においては,肥満やメタボリック症候群,その肝病変である非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が急増し,その対策が急務となった.脂肪肝(fatty liver)とは肝臓に余剰な脂肪が溜まった状態で,余剰な脂肪は脂肪滴として肝細胞質に蓄積する(図1)1〜2).脂肪肝の血液診断マーカーはなく,日常診療では超音波検査やCTなどの画像検査で診断される.脂肪肝の原因は,過剰飲酒,肥満・メタボリック症候群などのインスリン抵抗性,生活習慣病,脂質代謝異常,内分泌疾患,高度の栄養障害,長期間の完全非経口栄養,薬物,膵頭十二指腸切除後など多彩である(表1).肝臓学では,脂肪肝はアルコール性と非アルコール性,つまりNAFLDに大別されている1〜7).NAFLDは,アルコール性肝障害をきたすほどの飲酒歴のないすべての脂肪肝の総称で,多彩な病態を包含する.しかし,多くのNAFLDはインスリン抵抗性を基盤に発症するため,インスリン抵抗性に起因した脂肪肝のみをNAFLDとし,他の病因を二次性NAFLDとして除外することもある.なお,NAFLDはインスリン抵抗性を増悪し,両疾患は悪循環を呈するため,全身疾患として捉える必要がある.
NAFLDは,80〜90%は病態が進行することが稀で病的意義のほとんどない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)であるが,10〜20%は脂肪変性に壊死・炎症性変化を伴い,肝硬変や肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)である(図2).NASHは肝組織学的に診断されるが,肝生検は一般的な検査ではなく,日常臨床ではNAFLDとして扱われることが多い.本稿では,わが国のNAFLDのガイドラインを中心に概説する.
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