Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・8
肺尖部胸壁浸潤肺癌の手術
橋本 正人
1
,
田辺 達三
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.87-90
発行日 1988年1月20日
Published Date 1988/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209908
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はじめに
肺尖部に発生し胸壁に浸潤する肺癌は通常の肺野型とはやや異なる臨床像を呈し,その治療方針に関しても異なった考え方が必要である.1932年Pancoast1)は肺尖部胸壁に存在し,上肢の激痛,筋萎縮,肋骨あるいは椎体の破壊,ホルネル症候群をともなう腫瘍をsuperior pulmonary sulcus tumorとして報告した,その後このような腫瘍はPancoast腫瘍,このような症状はPancoast症候群と呼ばれているが,現在そのほとんどすべてが肺尖部に発生し胸壁に浸潤した肺癌であることが知られている.
肺尖部に発生し胸壁に浸潤する肺癌のうちでもその占居部位が比較的後方で,椎体,神経根に浸潤するものは定型的Pancoast症候群を呈するが,前方のものではPancoast症候群を呈するより先に鎖骨下動静脈に浸潤を来たすことが多い.正岡ら2)は肺尖部胸壁に浸潤する肺癌を肺尖部胸壁浸潤肺癌apical invadinglung cancerと総称し,superior sulcusより後方に存在しPancoast症候群を呈するものをsuperior sulcustumor(pancoast tumor),superior sulcusより前方に存在するものをanterior apical tumorと呼称することを提唱している.
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