My Operation—私のノウ・ハウ
大腿ヘルニア根治手術
平島 得路
1
,
山城 守也
1
1東京都老人医療センター外科(旧称:東京都養育院付属病院)
pp.1567-1571
発行日 1986年10月20日
Published Date 1986/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209559
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適応と手術
大腿ヘルニアは,小児には極めて稀である一方,比較的高齢の女性に多く認められる,当院の65例の大腿ヘルニア症例中,男性例は3例にすぎず,著しく女性例が多くなつている.左右別頻度は,右側33例,左側32例で,外鼠径ヘルニアのごとき左右差は認めていない.両側例,再発例はともに2例(3%)ずつであり,同時期の他のヘルニアにおける,両側例,再発例の頻度(ともに10%)に比して少なくなつている.しかし,一方で大腿ヘルニアは,嵌頓の頻度の高いヘルニアとして知られている.当院での嵌頓率は62%と高く,特に右側での頻度(右側82%,左側41%)が高くなつているが,これは,左側ではS状結腸の存在が,ヘルニア門への小腸の進入を防いでいる一方で,右側のヘルニア門に対しては小腸間膜の右下りの解剖学的特徴により,回腸がより近距離となつているためと考えている.また,嵌頓例に対する,用手整復の成功率は,他のヘルニアに比して低く(当院例で5%),大部分は,救急手術の適応となつているが,そのうち,腸壊死に伴う腸切除をうけた例は40%にのぼる.特に,発症より24時間以上経過した例,腸閉塞症状を呈していた例,白血球数が10×103/mm3以上の例では,さらに腸切除率が高く(60%以上)なっているため,用手整復を考えるべきではない.いずれにしろ,大腿ヘルニアに対しては,手術療法が唯一の治療法であり,根治性とともに,ヘルニア内容の確実な処理のできる手術法でなければならない.
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