Japanese
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特集 迷切後の諸問題
術後の愁訴および障害
アカラジア様症候
Post-vagotomy dysphagia
吉野 肇一
1
,
片桐 誠
1
,
山藤 和夫
1
Keiichi YOSHINO
1
,
Makoto KATAGIRI
1
,
Kazuo YAMAFUJI
1
1慶応義塾大学医学部外科
pp.1729-1735
発行日 1981年11月20日
Published Date 1981/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207831
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迷切後のアカラジア症候とは?
1947年にMosesが初めて迷切後に生じた著名な嚥下困難をアカラジアとして報告した1).それは44歳の男で,十二指腸潰瘍で行なわれた胃切除後に発生した吻合部潰瘍に対し,横隔膜上で行なわれた迷切後10日目に発症したもので,腹腔神経節ブロックで治療された例である.その後,迷切後の嚥下困難の臨床症状やX線所見(図1)が,食道アカラジア(噴門痙攣,噴門無弛緩症)によく似ているところから,迷切後のアカラジア,またはアカラジア様症候と呼称されている2,3),この際の嚥下困難の程度はさまざまで,食物の食道内下降が遅延する感じに始まり,やがて固型物の嚥下が困難になり,さらに数日後には液体も通過困難となるのが典型的とされている4).
われわれは本症を,迷切後1〜2週に発症するがん固な嚥下困難症で,その程度は術直後は可能であつた経口摂取がほとんど不能となる程高度のもので,そのために輸液療法,さらには入院期間の延長を要するものとして取扱つている.迷切以外でも食道下部,噴門部を操作する手術,例えば胃全摘,噴門部切除,あるいは噴門部のリンパ節郭清を徹底的に行なつた幽門側胃部分切除などのあとでも,患者によくたずねてみると,多かれ少なかれ,食物のつかえ感を訴えることが多い.これらは症状の強さや存続期間から本症とは区別して取扱つている.
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