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■なぜ内科治療とのControversyになるか
潰瘍性大腸炎は保存的治療が原則で,一部の重症・難治例が手術の対象となる.その頻度は全症例の10〜20%程度である.手術は(1)救急または緊急(準救急)手術と,(2)待期手術があり,表1に示すようにおよその適応が定められている.救急・緊急手術は絶対適応とみなされ,全身状態が重篤なものに施行される場合が多い.すなわち,感染,貧血,低蛋白血症,ステロイド剤長期連用後状態などの不利な条件を備えているものが多く,これに大腸全摘出術などが行なわれるため,時期を失すると手術死亡が少なくなかつた.このことはまた内科側が大腸全摘出術や人工肛門造設が行なわれることをためらい,効果がないのに内科治療に固執し,全身状態が極度に悪化してはじめて最後的手段として,止むなく外科へ転送する傾向があつたことも一因となつていた.これはまた,手術成績をますます悪くする結果を生み,外科側は手術時期の遅延を内科の責に帰し,内科側は手術の効果を信じないということにもなつた.しかし,近年,本症全般に対する治療法が進み,内外両科の連繋も緊密となつて来たので,保存的治療の限界を超える重症例の早期手術の必要性についての両科の間のcontroversyは余りなくなつて来た.さらに治療の進歩により,救急手術が必要となるまで重篤化する症例も減少して来たようである.
待期手術は比較的適応であり,全または亜全大腸罹患型で症状著明,発作が持続または反復し,保存療法の効果の少ないものが対象となり,全身または局所の著明な合併症のあるもの,発育遅延を示す小児症例などもこれに入る.このような症例に対し,患者の一生について将来を予見し,必要ならば早く手術した方が得策であり,とくにこれに危険がなく,人工肛門が必要でないものが多いのであれば,外科側は手術を積極的にすすめたい所である.しかし,保存的治療を合理的に行なえば,かなり重症でも何とか日常生活が送れるようになるものもあり,根治性があるからといつて性急に手術にふみきれない場合も多い.とくに人工肛門が必須となると手術を躊躇する患者や内科医が多い.一方,本症は良性疾患で,気長に合理的に保存的治療を続ければ社会復帰のできる症例が多いとはいえ,一部には手術の効果が大きく患者に大きな利益を与える場合があるのは事実である.このような症例をえらび,外科側も長期的見通しをたてつつ,機能保持と疾患の治癒という両面をなるべく満足させるような手術を,よい時期に,周到な準備のもとに行なうべきである.
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