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はじめに
従来より本邦においては,消化性潰瘍に対する手術術式として広範囲胃切除術が広く行なわれてきている.この術式は壁細胞稠密区域の除去と,ガストリン産生の場である幽門腺領域の除去により著明な減酸効果が得られ,潰瘍再発が少ない.しかし術後の長期追跡例が多くなるにつれて,消化吸収障害,胃切後貧血,骨軟化症などの代謝異常例が問題となつてきた.このため十分な減酸効果が得られ,しかも胃を大きく残す小範囲胃切除術に対する関心が高まつてきた.
このような情勢のもとで脚光をあびたのがDra—gstedt1)によつて広められた迷走神経切断術(以下迷切術)である.Dragstedtは胃液分泌の生理学的機構から考え潰瘍発生の二元説を唱え,胃潰瘍のそれは幽門洞性胃液分泌が主体をなし,十二指腸潰瘍のそれは迷走神経性胃液分泌が主体をなすとした.このような理論的根拠にたつと,十二指腸潰瘍に対しては迷切術を,胃潰瘍に対しては幽門洞部切除術(以下幽切術)を行なうのが最も合理的な手術法であるとした.彼はその後多数の十二指腸潰瘍症例に単独全幹迷切術を施行したが,その遠隔成績は必ずしも良くなかつた.以来幾多の先駆者2-10)によつて術式の改良が行なわれ,現在行なわれている迷切術は,選択的胃(選胃)迷切術兼幽門成形術(幽成術),選胃迷切兼幽切術,選胃迷切兼胃半切術および選択的近位(選近)迷切術などである.このように一口に迷切術と言つてもその種類が多く,胃切除術を併施する方法から胃に全く外科的侵襲を加えない方法まであり,術式の選択が問題となつてくる.また迷切術は当初十二指腸潰瘍に対して適用されていたが,胃潰瘍に対しても用いられるようになつてきたので,今回は消化性潰瘍に対する迷切術の適応ならびに術式の選択についてのべる.
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