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はじめに
わが国の癌の死亡数は年間13万人で,その40%近くを胃癌が占めている.さらにこれを消化器癌全体にひろげると,その比率は60%以上にも達する.胃癌の化学療法についてえられた成績は他の消化器癌にも適用できるわけで,その研究は非常に重要である.しかし最近はもちろん,30年にわたる化学療法発展の歴史を通じても,胃癌よりはるかに患者数の少ない白血病や悪性リンパ腫の化学療法に関する報告の方が,胃癌に関するものよりも数が多い.このことは胃癌の化学療法の困難さを如実に物語つているのであつて,その効果は進行癌に対するもの,付加的化学療法とも,甚だ不満足なものである.こういう差はもちろん腫瘍細胞の薬剤感受性とか,薬剤の作用する場の相違などが関係するものであろうが,胃癌細胞と白血病あるいは悪性リンパ腫の腫瘍細胞との間の生物学的,あるいは生化学的差が本質的なものか,あるいはその差がただ単に量的なものにすぎないのか,その点が問題である.従来抗癌剤のScre-eningは主として白血病細胞に有効な薬剤を目標として行なわれて来た.しかしもし胃癌細胞と白血病細胞との間に本質的な差があるとすれば,われわれは抗癌剤のScreeningのあり方にも根本的変更を加えなければならないし,またもしその差がただ単に量的なものにすぎないとすれば,胃癌においても,われわれが白血病や悪性リンパ腫において成功したのと同じ方式をおし進めていけばよいことになる.
以下われわれの1951年から1972年までの22年間の切除不能胃癌946例の治療成績をふりかえりながら,今後の胃癌の化学療法のあり方について考察を加えてみたい.なお化学療法有効例とは,明らかな,径で25%以上の腫瘍の縮小がみとめられた症例をいう.またつぎの如き略号を用いた.MMC (Mitomycin C),5-FU (5-fluorou-racil),Ex (Endoxan),CA (Cytosine arabino-side),CHMR (Toyomycin),Ft 207(Futraful).
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