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近年computerized transverse tomography (CTT)と呼ばれるシステムが世界的に普及し,その有用性に対する評価は既に定着した感がある.これは,X線管とこれに対向するシンチレーションX線検出器で体の水平断面上を走査し,得られた情報をcomputerによつて画像に再合成するシステムで,従来のX線写真では得られなかつた組織による僅かなX線吸収度の違いをも判定可能にした.
透過放射線のcomputerによる画像再構成は,1961年にOldendorfによつて試みられており,その後もいくつかの試みが見られている.しかし,実用に供されたCTTは1972年英国のHounsfieldによつて開発された頭部診断用のEMI-scannerである.EMI-scannerでは高さ8mmまたは13mm,幅3mmのpencil beamで頭部の水平断面上の1片を線上に走査し,透過X線がX線符球と対向し,これと平行に移動する沃化ナトリウム結晶によるX線検出器で,1辺240点について計測される.この線scanningが頭部を中心に1度ずつ角度を換えて180°,180回にわたつて繰り返される.得られた240×180すなわち43,200の情報はcomputer処理されて,走査が行なわれた断層の頭部断面像がline printerおよびブラウン管上に描写される.1断面を得るに要する時間はscan時間4分30秒,computerの計算に要する時間約20秒の計約4分50秒である.この間,被検者は専用のベッドに仰臥し,ゴム製の水を満たしたwater ba墓に頭部を挿入していれば良く,全く無侵襲である(①).line printer上には,24cm四方を160×160の画素に分割し,各画素に相当する頭部の組織のX線吸収度がprint outされる.したがつて各画素の表わす数値はその部位に対応する頭部の一部である1.5×1.5×8.0mmまたは1.5×1.5×13.0mmの四角柱の容積内の平均化されたX線吸収値を示している.X線吸収値を表わすのに,EMI-scannerでは特殊な数字が用いられている.これは空気のX線吸収値を−500,水のそれを0,骨のそれを約+500とした数値で,水のX線吸収値の0.2%を1としている.頭部正常組織では,脂肪組織が−50,脳脊髄液が+1〜+11,脳白質が+14〜+17,灰白質が+18〜+21,石灰化組織が+20以上で表わされる.ブラウン管上には,これ等のX線吸収値が,任意のレベルを中心に任意の幅で取り出され.その間が10段階のgray scaleでdisplayされ(②),脳室,脳槽の像を明確に見ることはもちろん,白質と灰白質との区別も可能である.
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