Japanese
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臨床研究
腹膜癒着の研究—走査電子顕微鏡による観察
Scanning electromicroscopic studies of peritoneal adhesion
斉藤 破瑠夫
1
,
石井 道夫
1
,
綿貫 喆
1
Haruo SAITO
1
1東京慈恵会医科大学第1外科
pp.231-237
発行日 1975年2月20日
Published Date 1975/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206194
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はじめに
腹膜癒着と癒着防止方法については,古くから臨床的にも実験的にも,種々の方面から研究されて現在まで多くの業績が残されている.しかし,腹膜癒着を十分に防止しうる決め手となる方法または薬剤を見出しえないばかりでなく,癒着防止効果の判定方法についても一定した意見がない状態である.すなわち腹膜癒着防止剤の効果をみる場合,臨床的には癒着症状の発現の有無によつて,また実験的には,再開腹によつて癒着の程度を肉眼的に観察して,薬剤の効果を判定しているものが多い.また癒着の微細構造の観察にあたつても,癒着の主要な役割を演ずるフィブリンが線維状のため,薄切標本からはその構造変化をとらえることがむずかしい.
近年医学領域に盛んに応用されるようになつた走査電子顕微鏡(以下SEMと略す)は,物質の表面微細構造の観察にきわめて適したものである.SEMによつてえられる多くの情報のうち現在医学領城に主に利用されている二次電子像では100Å程度の分解能がえられるばかりでなく,透過電子顕微鏡(以下TEMと略す)に比べて同時にきわめて広い範囲の観察が容易に行なえる利点をもつている.さらに二次電子像は物の表面を肉眼で観察したのと似た像がえられるばかりでなく,光学顕微鏡に比べてきわめて深い焦点深度をもつている.このため凹凸のはげしい表面微細構造の観察が可能となる.
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