臨床メモ
縫合糸の話
牧野 永城
1
1聖路加国際病院外科
pp.508-509
発行日 1972年4月20日
Published Date 1972/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205584
- 有料閲覧
- 文献概要
外科用縫合糸は,最終的に組織によつて吸収されるか否かによつて,吸収性と非吸収性の2種に大別できる.
吸収性のものは,Catgut(腸線)とよばれるもので,本来は羊の腸の粘膜下組織のCollagenから作られるものだが,わが国では,戦時中原料の輸入ができなかつたために,牛,豚,馬などの腸の漿膜を利用する方法が開発され,原料が安価であり,質的にも羊のものに劣らないとされて,現在でもその方法が続けて行なわれている.クローム加工の有無によつて,plain catgutとchro-mic catgutの2種に分かれるが,クローム加工は生体の組織による吸収に対して抵抗性を増す,つまり吸収をおくらせることによつて,糸の力(抗張力)をなるべく長く維持しようという意図で行なわれる.一般に組織内に埋没した状態で,とくに他の特殊な条件がなければ,plainは7〜10日,chromicは20日間位に抗張力を維持できる.しかし胃液などにさらされた状態では,plainは6時間,chromicは36時間位しか,抗張力を維持できない.わが国の製品には,クローム処理が粗悪なもの,表面のざらつくもの,脱色しやすいものなどが多く,欧米の製品と比べて品質が劣るのは残念なことである.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.