カラーグラフ 臨床病理シリーズ・2
甲状腺癌Ⅱ
原田 種一
1
,
西川 義彦
1
,
伊藤 国彦
1
1伊藤病院外科
pp.282-283
発行日 1972年3月20日
Published Date 1972/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205555
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前号では,甲状腺癌の大部分を占める乳頭腺癌を理解する目的で,その典型的な症例を供覧した.本号においては,甲状腺癌と,他の甲状腺疾患との併存した症例について述べたい.甲状腺癌が,良性腺腫と併存する頻度は,かなり高いものであるといわれている.このことは,腺腫様甲状腺腫の場合,特に著しい.そのために,腺腫様甲状腺腫を含め,良性腺腫の手術に際しては,術中ならびに術後に,肉眼的および組織学的に,慎重な検索が望まれる.また,甲状腺癌では,甲状腺の全葉がほぼ癌組織により置換された様な場合でも,機能低下に陥ることはなく,機能の亢進をきたすことは,転移を有する症例で報告されているが,極めて稀であり,我々は経験していない.したがって,癌と診断された症例で,機能の異常が認められた場合は,バセドウ病をはじめとする機能性の疾患との併存を考慮するべきである.甲状腺の片葉欠損は,稀な畸形であるうえに,全欠損と異なり,無症状であるので,何等かの甲状腺疾患が疑われて,シンチグラム検査や,手術を受けない限り,発見されることは少ない.
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