Japanese
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特集 乳腺疾患—その診療の進歩
乳腺症の臨床
Clinical studies of mastopathy
渡辺 弘
1
Hiroshu WATANABE
1
1国立がんセンター外科
pp.179-185
発行日 1969年2月20日
Published Date 1969/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204793
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Ⅰ.乳腺症の診断
1.臨床所見
乳腺症は大体閉経期およびその前後,すなわち30歳台から40歳台の婦人に多く発生する.また20歳台以下や60歳台以上では極めて少ない.乳腺症の腫瘤は両側あるいは片側の乳腺内に同時,あるいは相前後して発生する.腫瘤は稀には皮膚面に膨隆して視診できる場合もあるが,触診ではじめて存在を知る場合が大部分である.腫瘤表面の皮膚には変化はない.すなわち発赤,熱感,異常の光沢,血管の怒張などはない.腫瘤は平手での触診では不明瞭で,指の間に挾むようにするとはじめて解る場合が多い.境界は大体わかるが不明瞭なものが多く,小豆大から鵞卵大に至る大きさに触れ,形は球状,卵状,円盤状などいろいろである.表面は凹凸不平で,大小種々の顆粒状結節が集合して形成した塊のように触れる.重要な性状は腫瘤の硬度であるが,一般に弾性硬から弾性軟とさまざまである.多少硬くつまり正常乳腺組織よりやや硬く,乳癌のようにゴツゴツした硬さでもなく,線維腺腫のようにピンポン玉のようなくりくりした硬さでもない.しかもさまざまの硬度の顆粒状の結節が集合した感じである.これは病理組織学的所見が多種多彩であることに基因しているものである.
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