特集 腹部外科の臨床
綜説
開腹術の麻酔
中谷 隼男
1
1田園調布中央病院外科
pp.1163-1168
発行日 1965年9月20日
Published Date 1965/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203729
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はじめに
開腹術に限らず手術に当つて麻酔法が必要であることは無論のことであり,その際麻酔法の選択に当つては侵襲に対する身体的保護,精神的保護の両面より考慮決定すべきである.さらに腹部手術においては腹壁の弛緩は最も望ましい条件である.しかしいかなる麻酔法を使用するかは術者の好き嫌いで決定されることが多い.ある麻酔でたまたま不幸例を経験すると爾後絶対にその麻酔を行なわぬという人は実際にはたくさんある.
戦後アメリカの麻酔の影響をうけて吸入麻酔剤による全身麻酔(全麻)が取り入れられ近年は各大学に麻酔科も設置されるに至つた.ことに気管内麻酔による全麻が盛んになつた.その結果麻酔は専門家が引受けてくれるので大学病院あるいは大病院では手術者は麻酔に関する概念をあえて必要としない.腹筋の弛緩も適当にやつてくれるのできわめて安易な気分で手術しているのが現状かと思う.
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