アンケート
気管切開の適応と手技
藤田 五郎
1
,
稲田 豊
2
1自衛隊中央病院
2昭和医大麻酔科
pp.1120-1121
発行日 1964年8月20日
Published Date 1964/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203404
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気管切開(Tracheotomy)は,従来の一般的適応と考えられていた"異物あるいは疾病障害によつて気道の狭窄ないし閉塞をきたして窒息の危険のあるとき"のほかに,近時その適応範囲は著しく拡大されてきたといえる.これには,気道確保の重要性の認識や酸素療法(人工呼吸)・麻酔学の進歩ということがあずかつているようである.気道の死腔を2分の1にすることができることや,マスクとカテーテルを使用することなしに気管カニューレをとおして容易に酸素の供給のできること,そのほかに、気道分泌物の吸引の容易なことが再認識されてきた直接の効果であろう.
いまそれらの適応を列挙してみると,1)気管または喉頭の外傷,2)急性炎症による声門浮腫,3)ジフテリーによる窒息時,4)声門・喉頭の慢性炎症で療痕狭窄などを生じたとき,5)悪性腫瘍による気管の圧迫,6)気道の異物で直接除去する必要のあるときなどの一般的適応のほか,7)上気道の閉塞(異物,顔面・口腔・頸部の熱傷など),8)呼吸筋の衰弱・痙攣(破傷風・奇異呼吸),9)咳嗽反射の喪夫(中毒・頭部外傷などによる意識喪失者)時にもちゆうちよすることなく行なうべきである,これらの場合は,とくに症状発現以前に選択的予防的に実施することが少なくない.
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