特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
新生児・小児の外科—2,3の困難症について
林田 健男
1
,
古屋 清一
1
,
森岡 幹登
1
,
上村 実
1
1東京大学(附属病院分院)
pp.745-752
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202942
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小児外科の歴史が浅いばかりでなく,対象とする患児の病態生理学的知見に乏しい点もあつて,遭遇する困難は枚挙にいとまがないが,幾つかの特徴を挙げることも不可能ではない.個体差が大きく,同一疾患でも成人のごとく,比較的画一的な手術手技や術後管理をあてはめることを許さない.従つて一例毎新しい工夫を考え,新しい経験を積み,言わば暗中模索に近いことを繰返していることは,あながち経験した症例が少いためのみではなく,こういうこと自身が,むしろ小児,新生児外科の特徴であるとすら感じられるのである.昨秋来日した米国小児外科医のDr. C. E. Koopも術後の輸液は多分に経験にたよつているといつている.
また年齢が幼弱であればある程,予後の明暗が明瞭で,一旦良くなり始めれば,その回復は期待以上であるのに反して,悪化し始めるとしばしば急速に手が付けられない程の状態に陥入る傾向がある.このことは新生児・乳児の術後の副腎皮質反応1)2)や開排現象3)の推移からみると,幼弱乳児や新生児では,それぞれ特有な反応を示すことと並んで,この時期の患児の術後の経過に特徴を与えていると思われる.
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