特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅰ)
急性膵炎
津田 誠次
1
1岡山大学
pp.523-528
発行日 1962年6月20日
Published Date 1962/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202911
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急性膵炎には軽症と,重症と,超重症の3型があり,軽症は内科医がよく注意して観察すれば相当多いもののようである.しかしその診断は上腹部の疼痛,圧痛(特に左上腹部痛)等があつて,しかも胃や胆道疾患が否定され,その上尿のジアスターゼの増量が証明されれば確かであるが,尿ジアスターゼの増量が正常以上にない場合も比較的多いので,軽症型急性膵炎の診断は少なからず漠然としているようである.超重症型はまたたく間にショックに陥り,半日〜1日ですでに死の転帰をとるものもありその診断は極めてむずかしい.その中間に位する重症型は最も病症の明らかなもので,その外科的処置に対しては賛否なお相半ばするが,診断を確め,疼痛を急速に和らげ,諸種臓器なかんずく腸管,肝,腎等を膵酵素の影響から庇護するには,手術的療法もまた捨て難いものがある.最近独逸BayerからTrasylol1)(Trypsin—Kallikrein-Inaktivator)が発売せられるに当り,手術成績も向上するのではないだろうか.
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