Japanese
English
綜説
手術手袋用滑剤に就いて
Surgical Glove dusting powder
田所 一夫
1
Kazuo TADOKORO
1
1日本医科大学齊藤外科教室
1Department of Saitou's surgery. Nippon medical College
pp.485-496
発行日 1957年6月20日
Published Date 1957/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202003
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緒言
腹膜癒着防止に関する研究は,すでに古くから多くの人々によつてなされてきたが,未だ確実な防止策はみつかつていない.古くして新しい大きな問題の一つである.
こゝ十年来,腹腔内にも積極的な大手術が行われているにもかゝわらず,化学療法,各種抗生物質の進歩,発展により腹膜炎併発などの癒着の原因となるべきものは少いかと考えられるが,これら薬剤が局所的に使用されるときは術後癒着等憂慮すべき重要な問題を残すことが知られてきた.この様な新しい癒着の原因を詮索する前にわれわれの身近にあるところの手術用手袋の滑剤について眼を転じてみよう.われわれが長年手術用ゴム手袋滑剤として使用して来たタルクの問題である.すなわち,これが腹腔内に撒布されると所謂腹膜間肉芽腫を発生することは,すでに1933年Antopolにより報告され,その後Erb,Owen,Fienberg,Seelig,Lee,Lehman,Eiseman,Postlethwait等多数の入々によつても実験的にその腹膜癒着惹起作用が確認されている.本邦では田北教授(昭和31年)によりこの癒着作用が報告されている.Swingle(1948年)はタルクが明らかに原因と目される術後合併症並びに疾病が近年急速に増加しつゝあると述べ,更にTalcgranulomが無数の開腹術につきものであるばかりでなく究極に於いて死の原因ともなるとのべ,その確な面を強調している.
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