特集 頸部外科臨床の進歩
轉移性甲状腺腫の統計的観察
靑木 正敏
1
1名古屋大學第一外科教室
pp.801-805
発行日 1953年12月25日
Published Date 1953/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201352
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
甲状腺の上皮性腫瘍の内には臨床的にも組織學的にも惡性腫瘍としての所見を示さないが,生物學的には明に惡性と見られる一群の腫瘍がある。即ち良性腫瘍でありながら轉移するという矛盾は學問的に興味ある問題として病理學者,胎生學者外科醫の間で多年論議されて來たのであるが未だその決論をみていない。この腫瘍に關してはCo—hnheimが1876年にeinfacher Gallertkropfmit Metastasenと題する發表以來Langhans1),Kocher2),Wegelin 我國では1901年から金森3),伊藤4),石山5),斎藤6)等の追加發表があつて昭和28年5月迄に22例の症例の報告がある。而してこの腫瘍の治療成績を眺めると必ずしも良性腫瘍とは言い難く,術前診斷の極めて困難な點,並に最近の米國のこの腫瘍に對する態度を考察する時統計的觀察をする意義も少くないと思い,我が教室の2例を加えて本文を作つた。なお資料の不備,不正確等遺憾な點が少くなかつたがこれは本腫瘍の不明瞭な性格上己むを得ないことであり諸先輩の御批判に俟ちたいと思う。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.