最近の外國外科
増殖性及び靜止性轉移,他
B. Karitzky
pp.663-664
発行日 1953年11月20日
Published Date 1953/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201333
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癌轉移の問題を臨床的見地より見ると増殖性のものと靜止性のものとがあるがはつきりした区別は勿論つけ難い.又條件により互に移行もする.手術時轉移を認め解剖的治癒は得られなくても臨床的治癒が得られる事もあり,又靜止性轉移では轉移保持者として十数年も全く無症状である事もある.10年以上も無症状であつた癌の4例をあげ,決して例外ではないと述べている.癌の治療は多く轉移の治療そのものである事よりして如何にして増殖性のものを靜止性にし,靜止性のものをそのまゝに保つかは重要である.臨床的に轉移は発癌物質不適当な手術,間違つた照射,藥剤ホルモンの誤用により刺戟される.他方一般に栄養不足産褥,感染,藥物による衰弱,惡液質の際発育は盛になる.生体内増生抑制と促進との均衡が破れ促進が勝るからである.惡液質,衰弱がとれ高齢閉経期になると抑制的因子が優位にれつ様になり轉移は防がれ,生育は抑制され,崩壞の傾向は少くなり,腫瘍は休止性になり,爲に癌腫患者は單に癌腫所有者といへる樣になる.即ち癌轉移の最も効果的な治療は惡液質の予防といへる.一方老齢になれば生長速度,生長傾向が次第に減ずるのであるし,轉移のある場合は眞に根治的に手術するのは殆んど不可能であるから,無謀に行つて患者を衰弱させるよりも無理のない範囲の治療を行つた方が良結果が得られると述べている.
(Arch. f. klin. Chirur. 274. B. H.)
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