最近の外國外科
僧帽弁手術に対する心房細動及び心房血栓存在の意義,他
D. C. McGoon
,
W. S. Heney
pp.380-381
発行日 1953年7月20日
Published Date 1953/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201276
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心房細動はリウマチス性心臟弁膜症には屡々存在するものである.又この心房細動がある場合には心房内に血栓形成のあることも多い.これ等の事実は心臟弁膜症の内科的治療の際にもその予後の上から甚だ重要なことであるが,僧帽弁口狹窄の手術を施そうとする場合には一層重要な意義がある.著者たちはこの心房細動が弁膜手術決定上如何なる範囲まで禁忌となるかを闡明するために1935年以来剖檢89例,手術58例について調査研究した.その結果僧帽弁口狭窄患者の剖檢例では生前50%に,又手術例では手術前に38%に心房細動が見られていた.且つ両群患者の約半数に於て心壁附著血栓が発見された.そしてその樣な患者の95%に心房細動が存在し,僅に5%にのみ存在しなかつたことを知つた.心房細動を有する患者の手術例の13.5%,又心房血栓を有する患者の25%に於て脳エンボリーが既に麻醉中に起つた.これに反して心房細動を有しなかつた者の手術では2.8%,血栓のない者の手術例では2.2%に脳エンボリーが発生した.これ等の数値は他の学者の研究調査に基く数値と全く一致している.これによつて見ると心房細動は明瞭に手術に対する1つの危險を附随させている.著者たちの経驗でも実際に5名の術後死亡者中4名には手術前心房細動が証明されていた.しかし心房細動は心臟弁膜手術に対する絶対的禁忌ではない.
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