Japanese
English
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孤立性腎嚢腫を思わせた腎嚢腺腫の1例
A Cystic Adenoma of the Kidney
石田 正統
1
,
大園 茂臣
1
Masanori ISHIDA
1
,
Shigeomi OSONO
1
1東京大學醫學部福田外科教室
1Surgy of Tokyo Univ. Medical School
pp.535-537
発行日 1951年11月20日
Published Date 1951/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200927
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緒言 腎腺腫は内外文献によるも,比較的少く,然も其の組織発生に関しては未だ定説がない.吾々は最近当教室に於て興味ある構造を有する1例を経驗したので,こゝに報告する次第である.
臨床例:44歳男子,鑄物工,家族歴既往歴に特記すべきことは無い.現病歴は昭和25年7月初旬,偶然左季肋部に手拳大の腫瘤を気付き,9月12日膵臟嚢腫の診断の下に当科へ入院した.その間何等の自覚症状も無かつた.入院時所見は,体骼中等,栄養良,尿屎正常,心臟肺に所見なく,血圧70/125,ワッセルマン(—),肝を触れぬ.左季肋部に僅に膨隆があり,皮膚は正常である.触診すると,上部は季肋弓下に陰れる小兒頭大,表面平滑,弾性軟,波動不明,境界略々明瞭,呼吸性移動あるも僅に固定性あり,バロットマン陽性と思われ,立位でやゝ下降する腫瘤をふれた.血液所見正常,血清及尿ヂアスターゼ正常,屎中に多数の蛔虫卵あり.胸部レ線像正常,腹部單純撮影により,左上腹部に淡い小兒頭大の腫瘤像があり,その略々中央に小豆大の互に隣接集合した5個の石樣の濃い陰影を認めた.胃腸透視によう腫瘤との直接関係は認められぬ.気腹法により腫瘤は後腹膜腫瘍と想像された.下行性ピエログラフによると左腎は後上方に圧排されて,且つ腎門は前方に捩れているが,腎盞の破壞像はなく,輸尿管は側方に圧排されている.膀胱鏡所見は正常,インジコカルミン排泄時間が右に比し約1分遅延するが略々正常範囲である.
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