--------------------
粉瘤を母地として發生した癌腫の2例
松田 尚泰
1
1日本醫科大學齋藤外科教室
pp.287-291
発行日 1948年7月20日
Published Date 1948/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200347
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
皮膚に發生する原發性癌腫は一般癌腫に比べて極めて少いことは,既に多くの癌統計業績に依つて明かなところで,1889年Volkmannが223例に就いての精細な觀察をなして以來,皮膚癌が臨牀,解剖,竝に組織學的に種々の特性に有してゐることは,諸學者の注目するところとなつた。殊に原發性皮膚癌の中で良性腫瘍である粉瘤から癌腫の發生した例は廣く文獻を渉獵しても極めて稀であつて,1888年にTrankeの報告があつて以來,Zesás(1904),及びHübler(1924)等の報告例があつた。
飜つて本邦に於ては,鹽田先生の御話によると1899,Scriba先生が頭部の粉瘤から生じた癌腫を非常に稀有なものとして珍重されて居たとのことであるが,1913年林の報告を嚆矢として,其後青山(1915),鈴木(1915),藤原(1916)等の報告があるが,余の集め得たのは今日迄僅かに12例に過ぎない。余は最近當教室に於て本症の2例を經驗したので,茲に追加報告する次第である。
Copyright © 1948, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.