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十二指腸潰瘍の外科的處置—根治的切除手術に對する工夫
中山 恒明
1
1千葉醫科大學
pp.83-89
発行日 1948年3月20日
Published Date 1948/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200298
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1. 緒言
私は最近島田氏(日本醫師會雜誌第21卷4號)並に大井氏(臨牀外科第1卷3號)の二つの十二指腸潰瘍に對する論文を讀んだ。私はこの二つの論文中,特に大井氏の所論に大いに共鳴する所があり且大井氏が其の結論に於て,『十二指腸潰瘍外科の現状はなほ滿足すべき域に到達して居ない。私は非合併症性十二指腸潰瘍の外科的治療に於ては今日,やゝもすれば曠置的胃切除術の優秀さになれて安易な氣持で本術式に頼りすぎるものがありはしまいかと疑ふものである。よろしく潰瘍根治的胃切除術第一主義の線に沿ふて精進すべきものと思ふ』と述べて居る點に對し私自身同感であり,理想的手術はやはり病竈部の完全切除でなくてはならぬ。そして在來の考へ方と仕事の技術方法ではやはり限度があつて相當數の症例に於て曠置的胃切除術で滿足せねばならぬ事を私は體驗して居る。しかしこの曠置的胃切除術は決して理想的なる手術成續を示すものでない事は大井氏の文獻考察の上に述べて居る通りである。私自身も幾多の術後の不快なる合併症として術後消化性潰瘍を初め曠置的胃切除術がビルロート第二法であるが故に腸閉塞や胃室腸吻合部口側室腸への食物の移行停留,下腹部膨滿感等を見て居り,此等の完全なる拂拭は根本的に考へを變へ技術的方面を工夫するに非ざれば成功せずと氣付いたのである。
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