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内容抄録
癲癇に關する腦髓描寫圖(Encephalogram)の觀察研究は,多數發表されてゐるが,之等の多くは,眞性癲癇に關するものであり,外傷に基くものは極めて少く,且つ,本症例の如く射創により晩發的に發生した癲癇症を多數觀察したものは,未だ行はれて居らぬ所であり,これが觀察研究は,癲癇の本態が,未だ未解決である現時,甚だ意義のある事と思ふ。私は,第一に88例の腦室像に就いて,形態的に觀察し,第二に,其の内の37例,74個の腦室像に就いて,ブラニメーターを用ひ面積測定と縦横徑測定とを行つた。第三に,腦手術前後に於ける變化に就いて,13例の腦室像を形態的竝に計測的に觀察し,以下の如き興味ある結果を考察し得た。(1)形態的觀察に於ては,全例に異常を認め,然かも80.68%に強變化を認めた。これを更に詳細に,變化部位,左右不同,形状,腦室系統の移動,第III腦室の擴大等に就て観察した。從來受傷の強さと,腦室像變化度とは,平行すると一般に言はれてゐたが,本症例に於ては,受傷程度が輕くとも,著變を認めたものが多い事を知つた。又,癲癇の特徴ある所見とされて來た腦室空氣非充填像は,1例も認めず,從つて從來の意義に對し一義を與へたものと思ふ。(2)計測的觀察に於ては,蝶形像及び,從來測定されなかつた牛角像及び側面像,更に私の考案した分劃區分法に依り,側面像各部位別測定を行ひ,形態的観察に依て認めた腦室像の異常,殊に擴大及び左右不同の顯著なる事實を更に數値的に實證し得た。(3)本症例に於ける如き腦手術は,多くは,術前後の腦室像に變化を示さないが,手術後,初めて癲癇症を發生した2例に於ては,何れも,術後著明なる擴大を示す事を,形態竝に數値的に認め得た。
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