必見! 完全体腔内再建の極意・8
胃全摘術後再建―サーキュラー・ステイプラーを用いた再建(引き上げ法)―合併症のない再建を目指して
比企 直樹
1
,
布部 創也
1
Naoki HIKI
1
1がん研有明病院消化器外科
pp.1350-1355
発行日 2013年11月20日
Published Date 2013/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104843
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■■はじめに
胃上部の早期胃癌に対する手術として,噴門側胃切除は根治性を損なうことがない手術であることは明らかである1)一方,術後のquality of life(QOL)は決して良好なものとはいいがたい.噴門側胃切除における術後のQOLに関するエビデンスはまだ結論づけるに至るものはなく,U領域のT1胃癌に対する術式として,むしろ胃全摘を推奨する外科医も多い.
腹腔鏡下胃全摘(LTG)は,腹腔鏡下幽門側胃切除(LDG)と比較して,技術的に腹腔鏡下手術への応用が困難であるというコンセンサスがあるが,その解剖を熟知したうえで手術を行うことで,腹腔鏡下手術にむしろ適している術式である.噴門周囲や脾門部の視野は腹腔鏡下では良好に得られ,その操作は容易である.しかしながら,吻合のステップは挙上空腸が上腹部のスペースを占拠することで吻合が困難となるため,コツと工夫が必要となる.また,再建にまつわる合併症が多く報告されている.再建関連の合併症には縫合不全,術後吻合部狭窄,吻合部出血などがあり,重篤となることも少なくない.
近年,LTGが定型化され,安定した成績が報告されるようになったが,われわれがこれまで行ってきたhemi-doubleまたはdouble stapling法による引き上げ法2)では,吻合部狭窄は一定の確率で起こる.これらも栄養障害の一因となることは間違いなく,われわれはこれを防ぐ意味で開腹手術に近いまつり縫いを用いた自動縫合器による食道空腸吻合を行い,安定した成績を得ている.
本稿では,以前より行っている引き上げ法によるアンビルヘッド格納法と,まつり縫いを用いたアンビル縫着方法を紹介する.
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