胃癌手術のロジック-発生・解剖・そして郭清・4
“ねじれ中心”と3本のtrunk
篠原 尚
1
,
春田 周宇介
1
1虎の門病院消化器外科
pp.194-203
発行日 2013年2月20日
Published Date 2013/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104464
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26腸回転~90度:今回は胎生期の最大イベントである腸回転のプロセスを,外科医の視点で解明する.胃の回旋が起こると,その反動で十二指腸ループは発育しながら右に張り出してくる.この十二指腸の右方移動を契機として,中腸では腸回転が始まる.中腸とは将来の遠位十二指腸から近位横行結腸までの部分で(第1回連載,図6参照),その中間地点に卵黄管がある.胎生4週頃から(すなわち,これまでたびたび示してきた胎生5週の基本図の時点からすでに)中腸ループは臍帯内に脱出し,生理的臍帯ヘルニアの状態になっている.中腸回転は,この卵黄管に向かってまっすぐに伸びたSMAを回転軸とする,反時計回り3/4周270度の大回転である.Michelsはその著書の中で,mesenteric trunkという呼称をSMAに与えている1).
まず90度回転した状態を,動脈の分岐とともに示す.この回転によって中腸ループの近位脚(十二指腸空腸脚)は右側に,遠位脚(盲腸結腸脚)は左側にくる(下図).十二指腸と結腸との間の狭い腸間膜の中をSMAが通っている.
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