書評
安達洋祐(著)「消化器外科のエビデンス 気になる30誌から(第2版)」
渡邊 昌彦
1
1北里大・外科学
pp.31
発行日 2012年1月20日
Published Date 2012/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103903
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
私は,外科に入局して1年目に長野県の小さな市立病院に出張した.生まれて初めて本格的な手術の手ほどきをしてくれた外科部長から,胃切除後や結腸切除でドレーンは不要,胃管は手術翌日に抜けと教わった.翌年,大都市の基幹病院に出張した私は,ドレーンは5日以上留置,胃管は排ガスがあるまで置くようにしつけられた.当時の私は疑うことを知らず「どちらも理屈は通っている」と自分を納得させ,しばらく,いや長年にわたって郷に入ったらそのまま郷に従ってきた.
8年前現在の職に就いた.ところが新しい職場での術後管理の常識は,胃管,ドレーン,抗生剤,包交(驚くなかれ,毎日毎日ドレーンや創のガーゼを交換していたのである)にはじまって,あらゆることが自分にとっての非常識であったのだ.こうなったら自分の常識を押し付け,近代化する以外に道はない.しかし若手に経験則を押し付けるだけでよいのだろうか.指導者として「彼らを理論的に納得させる義務がある」のである.しかし,「いちいち些細なことで文献など調べてはいられない」と自問自答を繰り返していた.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.