勤務医コラム・30
歳時記を買う
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.1517
発行日 2011年11月20日
Published Date 2011/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103840
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Mさん,75歳男性,当院で胃癌を切除して2年を越えた.再発もなくお元気.趣味は俳句.2か月に1回の外来では,病気の話などこれっぽっちもしない.新作の句を私に見せてくれるのだ.“涼し”は夏だが,“新涼”は秋,とか,ショウガのことを薑(はじかみ)という,などと,ためになることを教えてくれるので,私も楽しみに待っている.
彼に影響されて私も俳句なるものを作ってみたくなった.考えてみればこれまで30年近く,人の腹を開けて切ったりつないだりしてきたわけだが,普通の感覚からすれば,尋常ならざることを生業としてきたものである.そういう生活の対極にあるもの―絵でも文学でも音楽でもよい,何か芸術的なこと―に心惹かれる.確かに手術もartだが,そのartじゃない別のアートに触れたくなったのだ.
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