特集 看護の質に何を期待するか
看護職として看護の質をどう考えるか
看護を「買っていただく」立場から
村松 静子
1
1日本在宅看護システム(株)
pp.512-514
発行日 1993年6月1日
Published Date 1993/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900382
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“はみ出し”ボランティアが選んだプロへの道
今から十数年前のことである.夜の10時をまわった頃,ある病棟の一室で,がん末期患者に人工呼吸と心臓マッサージが施されていた.「もう,やめてください!」.必死に心臓マッサージを行っていた私の手は止まり,そのまま硬直してしまった.私の耳に入ったのは,家族の悲痛な叫びだったのである.救命とは何か看護とは何なのか,人間として生きるということは?——そのとき,私はさまざまなことについて考えさせられたのを覚えている.
同じ頃,私は訪問看護のボランティアを始めた.「助けてください」の一言に,同情的に動いてしまった私は,思いも寄らぬ看護の魅力に取りつかれて行くことになる.本来,ボランティアというのは自分の余暇を活用して行うものと考えられるが,私は私生活のかなりの時間を強制的に訪問看護にあてるという間違いを起こしてしまった.休日でも夜間でも,必要なときはいっでも対応するというのが,私の訪問看護に対する根本的な考えである.そして,医学的・看護学的観点に立った確実な看護を提供することが,私の看護実践の理想的姿勢なのである.しかし実際には,時間の強制・拘束は私生活上実に苦しかった.始めてしまったからには途中で投げ出すこともできない.そんな私の心の葛藤とは裏腹に,看護婦である私に求められる事柄は,より多く,より深まって行ったのである.
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