書評
李 啓充(著)「続 アメリカ医療の光と影―バースコントロール・終末期医療の倫理と患者の権利」
武井 麻子
1
1日赤看護大・精神保健看護学
pp.1582-1583
発行日 2009年11月20日
Published Date 2009/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102876
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日本では今,臓器移植法の改正をめぐってさまざまな論議がなされている.その大きな焦点は「脳死は人の死か」という問題である.しかし,こうした議論には大きな落とし穴があることを教えてくれるのが,本書である.まさにタイムリーな出版といえよう.
本書は『アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで』の続編である.著者はほかにも『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗』『市場原理に揺れるアメリカの医療』といった,一連のアメリカの現代社会のひずみを医療という側面から報告している.それらは,アメリカ医療の内部にコミットした人ならではの情報に満ちているが,しかしそれを読めば,著者が本当に伝えたいのはアメリカではなく日本の医療の将来への危機感であり,日本社会への警告なのだということがわかる.「命の沙汰も金次第」という社会の到来を黙って見ていていいのかという警告.
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