昨日の患者
辞世の句
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1287
発行日 2009年9月20日
Published Date 2009/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102703
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- 文献概要
古来,わが国では死を前にして思いの丈を詩歌に託す慣習がある.特に戦国武将は味わいのある句を多く残しており,現代でも辞世の句を詠む人が存在する.
90歳代のSさんが大腸癌の多発性肝転移,さらには癌性腹膜炎をきたして入院した.短歌や俳句が大好きであったSさんは,教職を辞したのちは晴耕雨読の生活を送っており,自宅の畑で妻と2人だけの生活に必要な野菜を栽培していた.また,短歌や俳句を詠んでは種々の大会に投稿し,歌会や句会などの講師を務めた.そして「足萎えの妻の下げたる万歩計 風につまづく数も刻みぬ」,「卯の花や島医慕われ老いにけり」,「地球をば離れしことの朝寝かな」などの詩歌を詠んだ.
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