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普遍文法を仮定する生成文法を基盤として,文法の脳内メカニズムの知見に基づいた第二言語習得研究の展開について考察する。本稿では特に,文法体系の一要素である句構造規則に焦点を当てる。まず文の構造を作る仕組みについて説明した後,その処理の生理的基盤をみる。次に臨界期を過ぎた成人に対して人工言語を学習させて,句構造規則の習得過程を,事象関連電位により調べた研究を詳しく検討し,その意義と今後の言語獲得研究の方向性について述べる。最後に句構造規則の処理の神経学的基盤について考察する。
はじめに
言語とは,古くから,日常世界における音と意味とをつなぐ架け橋であるといわれている。私たちは言語音を聞いてその意味を理解するが,音と意味との間にはその両者を結び付ける仲介役としての文がある。文を生成する規則,条件,原理の集合を文法という。言語の骨組みである文法の規則を脳の実体として捉えるならば,その処理は脳のどこでいつ,どのように行われているのだろうか。第二言語の習得では文法の学習が最も難しいといわれているが,臨界期をすぎた成人でも,母語なみの獲得は可能だろうか。またその神経学的基盤はいかなるものだろうか。
本稿では,言語学で広く受け入れられている生成文法の中核であり,文法規則の雛形ともいうべき「句構造規則」(Chomsky, 1965)に焦点を当てて,その処理の脳内メカニズムの生理的基盤をみる。次にその知見をもとにして,成人における人工言語の句構造規則の獲得過程について,事象関連電位を用いて調べた研究を紹介し,その意義と今後の方向性について考察する。最後に,句構造規則の処理の神経学的基盤について触れる。
The process of adult second language learning and its neural basis is an interesting question and many researchers try to explore its mechanisms using brain-imaging techniques. Critical investigations on the study of adult learning of phrase structure rules in artificial language show that event-related brain potentials technique has a great potential to measure the proficiency of language learning and its physiological basis. It is mentioned that the universal theory of grammatical knowledge could possibly be a good guideline to delineate the fine-grained brain mechanisms of adult second language learning processes.
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