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はじめに
リハビリテーション医療の場に参加してチームを形成する職種は,医療・福祉・保健の多方面にわたる.多くの職種が必要となる理由は,独立した個人である患者がもっている複雑で多面的な諸問題に対して,多数の職種があらゆる面から同時に解決への努力をする必要があるためである.多様なニードに応じて,多数の専門家がそれぞれの角度から患者の障害のそれぞれの側面に対して分担して取り組むと同時に,それが結局は一個の独立した個人である患者を細切れのパーツに分けてバラバラに治療することにならないように,絶えず緊密な連絡をとり,1つの方向に向けて推進していく統一的な活動となるためにはチームワークが必要である1).
このチームワークを最も具現化したものがカンファレンスである.カンファレンスは,チームで情報を共有して相互の意見交換や連絡・調整を行い,リハビリテーション計画を立案して役割を明確にするとともに,計画の結果を確認して進行状況を把握し,必要に応じて計画に修正を加えて,患者の「できる限りよい状態での社会復帰」に向けて推進していく場である.そして,新人理学療法士にとってはチームを実感する場であり,同時に,理学療法の質を磨く絶好の機会にもなる.
カンファレンスの場で理学療法士は,基本的動作能力の回復についての責任を担い,身体機能評価や動作分析などから問題点を捉えて,患者が望む生活とその実現を妨げている因子を明らかにし,機能予後の目標を設定してチームに伝える.そして,チームの各専門職から情報を収集し,多職種で協議・分析することで完成した評価をもとに,チーム全体の計画と合致する具体的な理学療法計画を立案して最適な治療を進める役割をもっている.
今回の入門講座のテーマは「はじめてのカンファレンス」である.ここで使われている「はじめて」は「初めて“for the first time”=最初の」という意味であろうが,最初のカンファレンスまでに先に挙げた理学療法士の役割を果たすための準備を完了することは到底できない.筆者の新人のころを振り返っても,最初は指導を受けながら記載シートを何とか埋め,カンファレンスでは緊張して,書いたことを読むのが精いっぱいで目的を理解していたかどうかも怪しい.したがって本稿では,むしろ,数年先にカンファレンスでこのような責任を果たせる理学療法士になるための準備を「始めて“start”=開始する」という視点で,横浜市立脳卒中・神経脊椎センター(以下,当院)の取り組みの経験をもとに解説する.
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