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特集 Up-to-Date外科医のための創傷治癒
創傷治癒の分子生物学的側面と,その臨床応用としての慢性(難治性)潰瘍治療
The molecular biological aspect of wound healing and treatments of chronic wound applying its concept
小野 一郎
1
Ichiro ONO
1
1札幌医科大学医学部皮膚科
キーワード:
慢性(難治性)潰瘍
,
保存的治療法
,
増殖因子(growth factor)
,
湿潤環境治療
,
創底形成
,
密封療法
Keyword:
慢性(難治性)潰瘍
,
保存的治療法
,
増殖因子(growth factor)
,
湿潤環境治療
,
創底形成
,
密封療法
pp.1481-1495
発行日 2007年11月20日
Published Date 2007/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101928
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要旨:最近の研究で,創傷治癒の機転は増殖因子やサイトカインの制御の下,進行していることが明らかとなっている.その反面,褥瘡や下腿潰瘍,糖尿病性潰瘍で代表される皮膚の慢性(難治性)潰瘍では創傷治癒の機転が低下していることに加え,全身状態が良好でない場合が多く,外科的な治療にも困難が伴う場合が多い.そのため,辺縁からの表皮化と潰瘍底からの肉芽組織の増殖,創の収縮の機序が相俟って進行して創を閉鎖させる,いわゆる保存的治療が選択される.この場合,消毒薬や抗生物質含有軟膏などで感染を抑制し,保存的壊死組織除去術を行いながら治療する,いわゆる古典的な治療が主体であった.それに対し,前述のように創傷治癒の分子生物学的側面が明らかとなり,増殖因子製剤と創傷治癒を促進する軟膏,コラーゲンスポンジや種々の被覆材を併用して治療する治療法の導入によって比較的短時間で良好な肉芽組織で被われた創とすることができるようになってきている.このように増殖因子と種々の外用剤や被覆材,コラーゲンスポンジを併用することで短時間で良好な創底(wound bed)を形成し,辺縁からの表皮化で創を縮小させ,比較的大きな創ではover-skin graftingすることで確実・短期間に閉鎖・治癒させることも可能となってきている.本稿では,この手法を中心に創傷治癒の分子生物学的側面とその臨床応用としての慢性(難治性)潰瘍の治療法を述べる.
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